Tanack SDは1957年7月に発売された田中光学というメーカーのレンジファインダーカメラです。
先代にあたる1955年に発売されたTanack IVSと併売する形で展開され、高機能かつ安価で購入できるということで話題を呼んだ1台です。
一番の特徴はデザインと言えるかも知れません。
当時、人気だったNikon S2に酷似したデザインとなっています。
もちろん、外観こそインスピレーションを受けていたかも知れませんが、機能面ではまったく別物に仕上がっています。
ファインダーの倍率は1.0倍で、アルバダ式フレームに自動視差補正が付いた高機能な明るいものになっていました。
当時は自動視差補正が付いたファインダーを搭載したカメラが他に1機種しかなく、先進的な機能を搭載してあり、ビューファインダーとレンジファインダーの構造は複雑すぎて、大量生産に向かないものでした。
フィルムの装填はIVSまでのTanackシリーズとは異なり、背面パネルを底蓋と一緒に取り外す形になっていました。
また、フィルムが完全に巻かれていないときにはレリーズできない安全装置が付いていました。
レンズマウントはライカスクリューマウントで、Tanack SD用に自社開発したレンズTanar 50mm F1.5が標準レンズとして用意され、以前にもTanarレンズは開発されており、ライカスクリューマウントであれば使うことができるようになっています。
上記の通り、Tanack IVSと併売する形で販売されていましたが、生産の主力はTanack IVSであり、SDは500台程度を生産したのみに留まり、後継機のV3の生産が始まるとすぐに生産終了となりました。
小さなメーカー製だっただけに決して恵まれたカメラではありませんでした。