1968年にPENTAXは、人工的に作られた螢石を採用した特殊撮影用レンズを開発して、その技術力の高さを世に知らしめました。
Ultra-Acromatic-Takumar 300mm F5.6は螢石をレンズに使用した2台目になります。
第1と第4レンズに螢石を使用し、第2と第3、第5レンズには光学ガラスを使用。
MFのため、慣れていないと初めはピントの調節に手こずるかもしれません。
M42スクリューマウントのオールドレンズのため、アサヒフレックスやアサヒペンタックスシリーズ以外で使用するなら自動絞り連動ピン押し込み機能のあるマウントアダプターとミラーレス一眼を組み合わせれば撮影が可能です。
贅沢にも螢石をレンズに使用していますが、取り扱いは慎重にならなければなりません。
というのも、一般的な光学ガラスのモース硬度が7なのに対して、螢石レンズの硬度は4と脆いからです。
そのため、メンテナスの時に前玉を拭いたり、ガスを吹きかけるだけでも傷ついたり、割れたりする恐れがある繊細なレンズなのです。
螢石の歴史は古く、18世紀から実用化に向けての研究が始まっています。
しかし、カメラに使用できるサイズで透明度の高い結晶は存在しておらず、実用化は難しいとされてきました。
しかしPENTAXはカメラに使用できるサイズで、なおかつ透明度の高い人工結晶の開発を成功させました。
Ultra-Acromatic-Takumar 300mm F5.6はPENTAXの情熱と技術を結集させた逸品で、現在では大変希少価値の高いレンズとなっています。