1973年に発売された「AI NIKKOR-QD.C Auto 15mm F5.6」は、Nikonが生み出した優秀な超広角レンズです。
画角が110度あるにもかかわらず、超広角レンズ特有の歪みは少なく、画面周辺にある像が湾曲しないのが特徴です。
つまり、このレンズで建造物などを撮影したとき、建物の直線がそのまま真っ直ぐな線として写し出されるので、パースペクティブが強いのに歪みのない、ある種不思議な感じのする写真ができあがります。
MFなので撮影の難易度はやや上がるものの、逆光には強いという特徴があるため、写真をはじめたばかりの人でも気軽に使えて良好な画像が得られるでしょう。
写真の色味はナチュラルで素直ですが、画面の隅がやや暗くなるため、そのギャップが画像にドラマチックな効果をもたらしてくれます。
このレンズの発売期間は短く、およそ5年でモデルチェンジとなったため、生産数も少ないと予想される貴重な逸品です。
さらに、本レンズのシリーズはAF時代に製品化とはならなかったので、それもこのレンズをレアにさせている要因でしょう。
また、同社のFマウントであるこちらのレンズは、同社の一眼レフカメラおよびアダプターをつければソニーなど一部の他社製品でも使用可能ですが、AI改造が必要となります。
本レンズは、新しい写真表現を求めている人には特に試してほしい銘玉といえます。