一般的なカメラのレンズには光学ガラスが使用されていますが、1968年に発売されたPENTAXのUltra-Acromatic-Takumar85mm F4.5には、光学ガラスは使用されていません。
5枚あるレンズの内、第1と第4レンズは溶融石英を、第2と第3、第5レンズには世界で初めて螢石(けいせき)を使用しております。
光学ガラスを使用しない事で、このレンズ一つで紫外(UV)・可視・赤外線撮影などのシーンに対応可能になっています。
撮影シーンを選ばないため、場所によってレンズを取り換える必要が無く、複数のレンズを携行しないで済みます。
ただし、赤外線域や紫外線域での撮影時には、それぞれフィルターが必要になります。
レンズを前から押すと少し後退する仕掛けになっているため、複雑な手順は必要ありません。
フィルターは別売りの物を含めて全部で7種類あり、写真撮影に役立ちます。
MFのため、ピント調節に慣れていない方は苦労するかもしれません。
M42スクリューマウントのオールドレンズのため、PENTAXのねじ込み式マウントカメラ以外で使用するのであれば、自動絞り連動ピン押し込み機能のあるマウントアダプターとミラーレス一眼を組み合わせれば撮影が可能になります。
18世紀には螢石レンズの研究はスタートしていましたが、実用に耐えられるだけの透明な結晶は小型な物ばかりで、実用化の目処は立っていませんでした。
しかし、1968年にPENTAXは写真用レンズに使用できる透明な大型の人工結晶を開発し、Ultra-Acromatic-Takumarに採用したのです。
PENTAXの技術と熱意が集結させた、いまでは非常に貴重な特殊撮影用レンズです。